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2026.09.27

日本企業のデータ活用はなぜ進まない?人材育成の処方箋|滋賀大学・竹村彰通学長

滋賀大学 学長

竹村 彰通(たけむら あきみち)氏

PROFILE

滋賀大学 学長。1952年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。米スタンフォード大学統計学部博士課程修了。同大学統計学部客員助教授、東京大学経済学部助教授・教授、同大学大学院情報理工学系研究科教授などを経て、2015年滋賀大学データサイエンス教育研究推進室長、2016年同大学データサイエンス教育研究センター長・教授、2017年同大学データサイエンス学部学部長。2022年より現職。日本統計学会理事長(2002〜2004年)、同会長(2011〜2013年)を歴任。専門は数理統計学。著書に『データサイエンス入門』(岩波新書)、『教養としてのデータサイエンス』(講談社)など多数。2026年3月刊行の『生成AIを活用したデータサイエンス入門―実例で学ぶ教科書』(学術図書出版)を監修。

日本企業のデータ活用が進まない根本的な原因は、データを分析できる人材の不足と、その前提となるデータ基盤の未整備にあります。

データ活用で米国に大きな差をつけられた日本。その危機感を背景に、2017年、滋賀大学に日本初のデータサイエンス学部が誕生しました。立ち上げを主導した竹村彰通学長は、企業との連携や社会人教育を通じて、データを扱える人材の育成に取り組んできました。

本記事では、竹村学長へのインタビュー(聞き手:デフィデ株式会社 代表 山本哲也)をもとに、日本企業のデータ活用がつまずく原因、日本初のデータサイエンス学部の歩みと特徴、企業派遣の大学院、生成AI活用を推奨する教育、そして米国との差について解説します。

この記事でわかること

・日本企業のデータ活用がつまずく根本的な原因

・日本初のデータサイエンス学部はなぜ成功したのか

・企業連携と文理融合――滋賀大学の強み

・企業派遣で学ぶ大学院と、社会人のリカレント教育

・大学が生成AIの活用を推奨する理由と、米国との差

日本企業のデータ活用はなぜ進まないのか

日本企業がデータ活用でつまずく根本的な原因は何か。竹村学長の答えは、データを分析する人材が少ないことです。そして、それ以前の問題もあります。

「日本ももう少し踏み込まないといけないと思います。」

――竹村学長

つまずきの段階 竹村学長が指摘する実態
データ基盤 DXそのものがまだの企業が多い。データがExcelのシートにバラバラに管理され、複数のファイルをどう分析するかから始めなければならない
人材 データを分析できる人材が少ない。基礎から統計学を学べる大学はまだ少なく、必要になってから統計を学ぶ人も多い
社会の仕組み 行政手続きなどのデジタル化も遅れている。コロナ禍の初期には、患者数の報告にFAXが使われていた

米国や中国は「何でもあり」の面があり、悪い面もある一方で、そこからイノベーションが生まれているのも事実です。竹村学長は、日本も、もう少しデータ活用に踏み込まなければならないと語ります。

ただし、変化の兆しもあります。日本社会には濃密な人間関係で物事を決める面がありますが、データを専門的に学ぶ人は増え、データに基づいて物事を進めることの重要性は徐々に理解されてきていると竹村学長は見ています。

バラバラのExcelを、一つのデータ基盤に

データ活用の第一歩は、社内に散らばったデータを一つにまとめ、使える状態にすることです。DEFiDEの社内業務クラウド「SmartOps」は、社員・組織・業務の情報をひとつの基盤に集約し、AIエージェントやRAG、需要予測で活用できるようにします。基本機能はずっと無料で、必要な機能だけを追加できます。

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日本初のデータサイエンス学部はなぜ成功したのか

2017年に滋賀大学データサイエンス学部を立ち上げた当時は、「カタカナの名前の学部で良いのか」「学生が集まるのか」「企業に採用してもらえるのか」といった不安の声が多くありました。就職を見据えて企業に「データサイエンスは必要か」と尋ねて回る中で、「日本にはこういう分野が大事だ」という声を得られたことが、手応えにつながったといいます。

「基本的に社会的なニーズがあったから成功したわけです。」

――竹村学長

データ活用で米国に大きく差をつけられたことへの危機感が日本社会にあり、そのニーズに応えたことで学部は成長しました。その後、他の大学も滋賀大学を参考にデータサイエンス系の学部を次々に開設し、国内でデータサイエンス系学部を持つ大学は約20にまで増えています。

全国の大学でデータサイエンス教育は広がっており、国の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」による認定数も増え続けています。

レベル 総認定数(2026年8月時点) 認定を受けている大学等
リテラシーレベル 655件 653校
応用基礎レベル 421件 288校

出典:文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」2026年度認定結果(ReseEd、2026年9月8日)

企業連携と文理融合――滋賀大学の強み

強み 内容
① 企業連携の質と量 立ち上げ当初から企業連携・社会連携に注力。企業連携を本務とする教員が約20名在籍し、常に数十件規模の共同研究が動いている。後発の他大学と比べ、企業連携の実績は一桁違うという
② 文系的な要素の強さ 学部がある彦根キャンパスは、経済学部の源流である彦根高等商業学校の地。経済学部から派生した経緯から、工学系・情報工学系を基礎とする他大学に比べて文系的な要素が強い

2026年5月には化学メーカーのレゾナックとの協業も発表され、同社の研究者が計算科学やAIの活用能力を高められるよう、滋賀大学の教員がオンラインを中心とした研修で指導します。

設立から10期目を迎え、卒業生の活躍も目立ってきました。データサイエンティスト協会で評価される卒業生や、企業で「データサイエンスならあの人に」と頼られる卒業生もいます。特に1期生は、新しいことに挑戦しようという意欲の強い学生が多かったといいます。卒業生がウェブのデータ分析や社内コンサルティング的な役割を早くから任されていることも、社会からの評価の表れです。

企業派遣で学ぶ大学院――実務と学術をつなぐリカレント教育

2019年に開設されたデータサイエンス研究科は、企業派遣をメインターゲットに設計された大学院です。企業派遣とは、企業が授業料などを負担し、社員が仕事を1〜2年中断して学ぶ、いわば「内地留学」のような仕組みです。

項目 内容
企業派遣の院生 開設以来、毎年20〜30人程度。院生全体の約3割
年齢層 30歳前後。入社して数年の社員が中心
派遣元 製造業の研究開発部門が増加。金融、教育、官公庁などさまざま
学び方 全科目をオンラインでも受講可能。仕事を中断して通学する人と、業務と両立してオンラインで学ぶ人が半々程度

カリキュラムも企業派遣の院生に焦点を当てて設計されています。現場の知識を持つ意欲の高い社員が、自社の課題をデータサイエンスで解決する力を身につける――それが、企業が社員を派遣する目的であり、研究科の強みです。ただし、ゼミのような学びは対面のほうが望ましい面もあるといいます。

大学が生成AIの活用を推奨する理由

滋賀大学は、学生の生成AI利用を禁止せず、むしろ推奨する方針を打ち出しています。

「私のメッセージとしてはAIを使いこなせる人材を育てないといけません。」

――竹村学長

就職の際、「AIを使ったことがない」より「使いこなせる」ほうが有利なのは明らかです。滋賀大学は大学向けのChatGPTサービスを導入し、院生の学び方や研究のあり方は大きく変わりました。教員からは「文章の完成度が上がった」という声も上がっているといいます。

もちろん、学内の全教員が賛成しているわけではなく、論文をAIに任せてしまう危険もあります。それでも、AIを使うかどうかで生産性は大きく変わる。自分で考えることを前提に、コピー&ペーストで済ませていないかを面接で丁寧に確認しながら、活用を進めていく方針です。

米国との差をどう埋めるか

国内のデータサイエンス系学部は10年ほどで約20大学まで広がりましたが、竹村学長は、米国とはレベル感として一桁違うと見ています。米国では統計学の修士が毎年約5,000人輩出されている一方、日本には統計学を専門とする研究科がほとんどなかったからです。

米国はAI分野が極めて強く、大手AI企業などの給与水準は日本とまったく異なります。AIの急速な進歩でプログラマーの就職率が下がっている米国でも、AIを使いこなせるデータサイエンス人材は依然として就職がよく、給与も高いといいます。年功序列的なキャリア体系の日本とは給与の考え方が根本的に違い、そこに追いつくことの難しさがあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 日本企業のデータ活用が進まない原因は何ですか?

A. 竹村学長は、データを分析する人材が少ないことに加え、それ以前にDXそのものが進んでいない企業が多いことを挙げています。データがExcelのシートにバラバラに管理され、複数のファイルをどう分析するかというレベルから始めなければならない企業も少なくないといいます。

Q. 滋賀大学データサイエンス学部の特徴は何ですか?

A. 2017年に日本で初めて設置されたデータサイエンス学部で、企業連携の質と量、そして経済学部を源流とする文系的な要素の強さが特徴です。企業連携を本務とする教員が約20名在籍し、常に数十件規模の共同研究が動いています。

Q. 社会人がデータサイエンスを大学院で学ぶことはできますか?

A. 滋賀大学のデータサイエンス研究科は、企業が授業料などを負担して社員を送り出す「企業派遣」を主なターゲットとして設計されています。院生の約3割が企業派遣で、30歳前後の社員が多く、全科目をオンラインでも受講できます。製造業の研究開発部門のほか、金融、教育、官公庁など派遣元はさまざまです。

Q. 大学で生成AIの利用を認めてよいのですか?

A. 滋賀大学は生成AIの利用を禁止せず、むしろ推奨しています。竹村学長は、就職の際に「AIを使いこなせる」ほうが有利であり、AIを使うかどうかで生産性が変わると述べています。一方で、自分で考えることが前提であり、面接で丁寧に確認することが大切だとしています。

Q. 日本と米国のデータサイエンス教育にはどれくらい差がありますか?

A. 国内でデータサイエンス系学部を持つ大学は約20まで増えましたが、竹村学長は、米国では統計学の修士が毎年約5,000人輩出されているのに対し、日本はレベル感として一桁違うと述べています。給与体系の違いもあり、優秀な人材が米国のAI企業に集まる状況が続いています。

まとめ:データ活用の鍵は、基盤と人材の両方

  • 日本企業のデータ活用がつまずく原因は、分析人材の不足と、Excelがバラバラなどデータ基盤の未整備
  • 日本初のデータサイエンス学部は、データ活用への危機感という社会的ニーズに応えて成功し、全国に広がった
  • 滋賀大学の強みは、企業連携の質と量、そして経済学部を源流とする文理融合
  • 企業派遣の大学院で、現場の知識を持つ社員が自社の課題をデータで解く力を身につけている
  • AIを使いこなせる人材を育てるため、生成AIの活用は禁止ではなく推奨。自分で考えることが前提

後編では、プログラミング不要のデータサイエンス入門の教科書、分析のプロセスである「PPDACサイクル」と人の関わり方、企業知の継承、そしてAI時代のデータサイエンティストに必要なスキルについて伺います。

「AIを使いこなせる」人材づくりを、現状把握から

AIを使いこなせる人材を育てるには、まず組織の中でAIがどう使われているかを知ることが大切です。DEFiDEの「生成AIワークバリュー・スコア分析」で、組織の生成AI活用の状況を可視化し、育成の優先順位を明確にできます。

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▶ 後編:生成AI時代のデータサイエンティストに必要なスキルとは?

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