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2026.10.28

数理・データサイエンス・AI教育プログラムとは?|九州情報大学・荒平高章教授

佐賀大学 理工学部 数理・情報部門 教授

皆本 晃弥(みなもと てるや)氏

PROFILE

佐賀大学 理工学部 数理・情報部門 教授。1997年九州大学大学院数理学研究科数理学専攻を単位取得退学。九州大学大学院システム情報科学研究科情報理学専攻助手を経て、2000年に博士(数理学、九州大学)を取得。佐賀大学理工学部知能情報システム学科講師、同准教授などを歴任し、2018年より佐賀大学教育研究院自然科学域理工学系教授。2025年より佐賀大学教育開発推進センター教授(併任)。専門は応用数学で、精度保証付き数値計算を出発点に、機械学習や人工知能の研究へと領域を広げている。著書に『スッキリわかる数理・データサイエンス・AI』(近代科学社、2024年)など。

 

数理・データサイエンス・AI教育プログラムとは、大学や高等専門学校の数理・データサイエンス・AI教育を、文部科学省が「リテラシーレベル」と「応用基礎レベル」の2段階で認定する制度です。九州情報大学の荒平高章教授は、経営と情報を融合した人材の育成を目指し、全学生が学べるリテラシーレベルから、専門を深める応用基礎レベルまでを段階的に展開しています。

AIやデータサイエンスの知識は、もはや一部の専門家だけのものではありません。では、大学ではその基礎をどのように学び、どのように専門へと深めているのでしょうか。

本記事では、機械工学から生体工学へ進み、現在はAI・データサイエンスを研究と教育の両面で扱う荒平教授へのインタビューをもとに、AIを研究の道具として生かす視点と、数理・データサイエンス・AI教育プログラムの仕組み、そして段階的な教育の実際を解説します。

この記事でわかること

・機械工学から骨再生、AIへと広がった研究の歩み

・AIを研究の道具として積極的に使う理由と、付き合い方

・数理・データサイエンス・AI教育プログラムの2つのレベル

・経営と情報を融合する、少人数大学のデータサイエンス教育

・リテラシーから応用基礎へ、段階的に学ぶ仕組みと課題

取材協力:荒平 高章 氏

九州情報大学 経営情報学部 情報ネットワーク学科 教授。2008年九州工業大学情報工学部機械情報工学科卒業。2013年九州大学大学院総合理工学府物質理工学専攻博士課程修了、博士(工学)。福岡歯科大学歯科医療工学講座生体工学分野助教、九州情報大学経営情報学部専任講師、同学部情報ネットワーク学科准教授を経て、2025年4月より現職。専門は生体工学(バイオエンジニアリング)とAI・データサイエンス。高等学校教諭の免許を持つ。2022年に文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞。共著に『経営情報入門』(中央経済社、2026年)、『リメディアル教育のための情報リテラシー』(八千代出版、2021年)。

聞き手:AI Future Talks編集部

機械工学を出発点に、骨再生とAIをつなぐ研究へ

荒平教授は学部で機械工学を学び、大学院で生体工学(バイオエンジニアリング)に出会いました。研究の中心は骨の再生です。コンピューターシミュレーションで骨の働きを解析するとともに、骨のような組織を実際に作製し、その力学的な仕組みを調べています。画像認識やデータ処理には、AIも取り入れています。

研究の柱 内容
バイオエンジニアリング 骨の再生をテーマに、シミュレーションによる解析と、骨のような組織の作製・力学的な検証を行う。画像認識やデータ処理にAIを活用
学生と進めるAI・データサイエンス研究 DXにも関わるテーマのほか、教育者の業務負担を減らすAI支援や、小中高校生向けのAI教材の研究に学生と取り組む

出典:荒平教授への取材をもとに編集部作成

学部卒業時には高校の教員になるつもりで、採用試験の直前まで勉強していたといいます。しかし、祖父母と暮らした経験から、工学と医学を組み合わせた研究を志し、大学院へ進みました。高校の教員免許を持つことも、教育へのAIの影響を重視する現在の研究につながっています。

大学院では、人工関節やデンタルインプラント、人工骨、人工血管などの生体材料(バイオマテリアル)を研究しました。歯科分野にも骨の研究が多いことから、博士課程では九州大学歯学部の教授のもとで材料作製の手技を学び、その縁で福岡歯科大学の助教としてキャリアを始めています。

AIは積極的に使い、中身を明らかにしながら付き合う

AIは急速に進化し、創薬や遺伝情報の解析など、これまでの計算量では難しかった分野も扱えるようになっています。荒平教授は、研究を前に進めるために、AIツールは積極的に使うべきだと考えています。一方で、AIは中身が見えにくい「ブラックボックス」だという指摘もあります。その仕組みを明らかにしながら付き合うことが大切だといいます。

研究の進め方では、複数の条件を同時に進めることを重視しています。学生時代に一つの条件だけで進めて失敗し、データが得られないまま時間を費やした経験から、博士課程以降は複数の条件を並行して検討し、試行錯誤を重ねてきました。2022年には文部科学大臣表彰「若手科学者賞」を受賞しています。

数理・データサイエンス・AI教育プログラムとは

数理・データサイエンス・AI教育プログラムは、大学などが行う数理・データサイエンス・AIの教育を、文部科学省が認定する制度です。認定には2つのレベルがあります。

レベル 目的・内容
リテラシーレベル すべての学生が身につけるべき、数理・データサイエンス・AIの基礎的な素養を育てる
応用基礎レベル リテラシーを土台に、自らの専門分野でデータサイエンスやAIを応用できる力を育てる
レベル 認定の状況(2026年8月時点)
リテラシーレベル 655件(認定を受けている大学等は653校)
応用基礎レベル 421件(いずれかの単位で認定を受けている大学等は288校)

出典:元記事に記載の文部科学省の発表(2026年8月時点)をもとに編集部作成

荒平教授によれば、ほぼすべての大学が少なくともリテラシーレベルの申請を求められており、近年は多くの大学が認定を受けています。

経営と情報を融合する、少人数大学のデータサイエンス教育

九州情報大学は、経営情報学科と情報ネットワーク学科の1学部2学科で、1学年およそ100人の小規模な大学です。経営情報学科は文系、情報ネットワーク学科は理系の学生が多く、必修科目を除いて授業は20人未満が基本です。一人ひとりに寄り添う教育を特色としています。

同大学は、文部科学省が2019年6月に各大学へリテラシーから応用基礎までのプログラム運営を求める前の、2019年4月には、すでにデータサイエンスコースを運営していました。教育理念は、経営・情報・会計の3つを融合した人材の育成です。認定プログラムは、大学の英語名の頭文字をとって「KIIS」と名づけられています。

レベル 九州情報大学での位置づけと主な履修内容
リテラシーレベル 2019年から早期に申請し、九州でも早い段階から運営。全学生が履修でき、経営と情報の基礎科目をバランスよく学んで、経営系とデータサイエンス・AI系の概要をつかむ
応用基礎レベル 九州でも早い段階で認定を受けた。主に情報ネットワーク学科向けだが、経営情報学科の学生も学べる。情報、プログラミング、データサイエンス、人工知能の科目でそれぞれの専門を深め、トップクラスの学生が高度な知識を身につけることを目指す

出典:荒平教授への取材をもとに編集部作成

情報ネットワーク学科には、ITシステムの仕組みを理解してITエンジニアを育てる「ITエンジニアコース」と、ビッグデータの解析を中心に学ぶ「データサイエンスコース」があり、荒平教授はデータサイエンスコースに所属しています。

段階的な学びを広げるうえでの課題

2019年から約7年の運用で、経営情報学科の学生が応用基礎レベルまで修了した例は1人にとどまるといいます。荒平教授は、その理由を難易度ではなく、情報ネットワーク学科の科目を相当数履修する必要があり、その中には経営情報学科の卒業単位に含まれない科目もあることに見ています。プログラムの修了を目指す学生と、卒業を目指す学生とでは、意識に差があると感じているそうです。

基礎を全員で身につけ、そのうえで専門に応じて深める――この段階的な考え方は、企業で社員のAI活用を広げるときにも参考になります。まずは、今どの段階にいるのかを把握することが出発点です。

社員の生成AI活用の「現在地」を把握する

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よくある質問(FAQ)

Q. 数理・データサイエンス・AI教育プログラムとは何ですか?

A. 大学や高等専門学校が行う数理・データサイエンス・AIの教育を、文部科学省が認定する制度です。すべての学生向けの基礎的な「リテラシーレベル」と、専門分野で応用できる力を育てる「応用基礎レベル」の2つがあります。

Q. リテラシーレベルと応用基礎レベルの違いは何ですか?

A. リテラシーレベルは、すべての学生が身につけるべき基礎的な素養を育てるものです。応用基礎レベルは、その土台のうえで、自らの専門分野にデータサイエンスやAIを応用できる力を育てます。九州情報大学では、応用基礎レベルで情報、プログラミング、データサイエンス、人工知能の科目を学びます。

Q. 認定を受けている大学はどれくらいありますか?

A. 元記事に記載の文部科学省の発表(2026年8月時点)では、リテラシーレベルの認定は655件(653校)、応用基礎レベルの認定は421件(288校)です。荒平教授は、ほぼすべての大学が少なくともリテラシーレベルの申請を求められているとしています。

Q. 九州情報大学のデータサイエンス教育の特色は何ですか?

A. 経営・情報・会計の3つを融合した人材の育成を理念とし、授業は20人未満の少人数が基本です。文部科学省が各大学にプログラム運営を求めた2019年6月より前から、データサイエンスコースを運営しています。

Q. 研究ではAIとどう付き合うべきですか?

A. 荒平教授は、研究を前に進めるためにAIツールは積極的に使うべきだとしつつ、AIは中身が見えにくい「ブラックボックス」でもあるため、その仕組みを明らかにしながら付き合うことが大切だとしています。

まとめ:基礎を全員で、専門は段階的に深める

  • 荒平教授は骨再生の研究にAIを取り入れ、教育分野のAI研究にも学生と取り組んでいる
  • AIツールは積極的に使い、ブラックボックスの中身を明らかにしながら付き合う
  • 数理・データサイエンス・AI教育プログラムは、リテラシーと応用基礎の2段階で認定される
  • 九州情報大学は、経営と情報を融合する人材を、少人数教育で段階的に育てている
  • 応用基礎レベルの修了には、学科をまたいだ履修のハードルという課題もある

中編では、教員と学生の距離の近さを生かした指導、企業のデータを使った分析と発表、そしてデータサイエンスをスポーツのコンディショニングに応用する研究について紹介します。

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