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2026.09.28

生成AIを「使いこなす側」になるには?問いと理論の力|創価大学・萩原良信准教授

創価大学 理工学部 情報システム工学科 准教授

萩原 良信(はぎわら よしのぶ)氏

PROFILE

創価大学 理工学部 情報システム工学科 准教授(取材時)。2010年創価大学大学院工学研究科情報システム学専攻博士課程修了、博士(工学)。創価大学工学部助教、国立情報学研究所特任研究員、立命館大学情報理工学部助教・講師、同大学総合科学技術研究機構研究准教授を経て、2024年より現職。立命館大学総合科学技術研究機構客員研究員、玉川大学脳科学研究所特別研究員を兼務。専門は知能ロボティクスと知能情報学。日本ロボット学会学術講演会「優秀研究・技術賞」(2024年)、IEEE SMC2024「Best Paper Award」などを受賞。共著書に『ROS2とPythonで作って学ぶAIロボット入門 改訂第2版』(講談社)など。

生成AIを使いこなすには、自分の実体験から問いを立てる力と、理論を理解して実装の限界を見極める力が欠かせません。

プログラムも文章も、生成AIがすぐに作ってくれる時代です。学生からは「生成AIの時代にプログラミングを学ぶ意味はあるのか」と聞かれることもあるといいます。創価大学の萩原良信准教授は、生成AIが出した結果をそのまま受け取る「使われる側」ではなく、生成AIを「コントロールする側」に立つことの大切さを説きます。

本記事では、萩原准教授へのインタビュー(聞き手:デフィデ株式会社 代表 山本哲也)をもとに、生成AIに「使われる側」にならないための考え方、理論を学ぶ意味、実体験から問いを立てる力、大学教育の役割、そしてAIやロボットをパートナーとして受け入れる日本の可能性について解説します。

この記事でわかること

・生成AIに「使われる側」になるとはどういうことか

・実装のハードルが下がった今こそ、理論が重要になる理由

・生成AIにはない「実体験」から問いを立てる力

・仮説・検証・説明を通じて論理的思考を育てる大学教育の役割

・AIやロボットを「パートナー」として受け入れる日本の可能性

生成AIに「使われる側」になっていないか

課題を出すと、生成AIでプログラムを作り、「動きました」と報告してくる学生もいます。一見すると動いていても、よく見ると、その入力情報だけでは原理的に求められないはずの量を扱っていることがあります。一緒に処理の中身を確認していくと、生成AIが自動的に作ったコードに、意図しない処理が含まれていたとわかることもあるそうです。

  生成AIに「使われる側」 生成AIを「使いこなす側」
出力への向き合い方 結果をそのまま受け取り、深く考えずに提出する 「これはおかしい」「このままではだめだ」と判断する
実世界との関係 出力が実際の問題に合っているかを確かめない 実世界の問題や条件に照らして、調整・修正・適応させる
必要な力 出力の良し悪しを判断する根拠を持たない 理論の理解と、実体験に基づく問題意識

「本来はそうではなく、「これはおかしい」「このままではだめだ」と判断し、生成AIをコントロールする側に立つ必要があります。」

――萩原准教授

こうしたことは、これからますます増えていくと萩原准教授は見ています。これまでとは異なる、新しいプログラミングの学び方や向き合い方が必要になっているのです。生成AIを日常的に使う若い世代は増えており、総務省の調査では、20代の生成AIの利用経験は44.7%と、年代別で最も高くなっています。

年代 生成AIの利用経験(2024年度調査)
20代 44.7%
30代 23.8%
40代 29.6%
50代 19.9%
60代 15.5%

出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」

実装のハードルが下がった今こそ、理論が重要

研究も技術開発も、実世界の問題に立脚することが大切です。一方で、実装そのもののハードルは大きく下がりました。だからこそ、萩原准教授が重視するのが「理論」です。

前編で紹介した共著書『ROS2とPythonで作って学ぶAIロボット入門 改訂第2版』(講談社)も、システム統合に特化した実践書にする選択肢がありながら、あえて理論的な背景を書く構成にしたといいます。

  • 理論を理解していれば、比較的容易に実装できる
  • 実装の限界がどこにあるのかを見極められる
  • 内部で何が起きているのかを把握できる

必ずしも自分で一からコードを書ける必要はありません。ただし、中身をある程度把握したうえで、「どこが足りていないのか」「どこをどう直せばよいのか」「どう導けば目的に近づくのか」というベクトルを描ける力が重要になります。そのためにも、理論や数理モデルをきちんと学ぶことが、今後ますます大切になると萩原准教授は語ります。

AIに任せる業務と、人が判断する業務を切り分ける

AIの出力を人が確かめ、判断できる形で業務に組み込むことが、AIを使いこなす第一歩です。DEFiDEの社内業務クラウド「SmartOps」は、AIエージェントやRAG、AI-OCRで社内手続きの確認や情報検索、紙の書類のデータ化などの定型業務を効率化し、人は判断や改善に集中できるようにします。基本機能はずっと無料です。

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生成AIにはない「実体験」から問いを立てる

萩原准教授は以前から、学生に「研究を進めるうえでは、自分の実体験や実世界での経験を大事にしなさい」と伝えてきました。この姿勢は、生成AIの登場以降、むしろいっそう重要になっていると感じています。一般的な知識やプログラミング能力では、生成AIのほうが人より優れている場面も少なくないからです。

大規模言語モデルは、ウェブ上の大量のデータから学習しています。そのため、その人が置かれたローカルな環境での実体験を、自ら得ることはできません。しかも、そうした経験は必ずしも言葉にしやすいものではありません。

「その「言語化されにくい経験」に立脚して考え、何度も議論することを研究や教育の中で重視しています。」

――萩原准教授

萩原准教授の研究室では、学部3年生からロボカップ@ホームの活動に取り組みます。最初は論文の内容をなぞるだけになりがちですが、論文の手法を実際のロボットで動かしてみると、思い通りにいかないことが次々と起こります。そのときの失敗や試行錯誤こそが、学ぶべき本質だと萩原准教授は言います。

大学教育の役割――仮説・検証・説明で論理的思考を育てる

論理的に考える力、仮説を立てる力をどう育てるか。萩原准教授は、それこそが大学教育の役割であり、大学でこそ教えられる部分だと捉えています。

プロセス 身につく力
① 調査する 何がわかっていて、何がわかっていないのかを把握する力
② 仮説を立てる 問題の原因や解決の道筋を、自分で考える力
③ 検証する 仮説が正しいかを、実際に確かめる力
④ 説明・共有する 結果を他者にわかりやすく伝える力

ただし、学部教育だけではどうしても基礎知識の習得で終わってしまいがちだという点には、萩原准教授も同意します。調査から説明までの一連の経験を積むことで、論理的な思考は身につく――それはAIには代替できない、人間の役割です。

日本はAIやロボットを「パートナー」として受け入れられる

日本企業がAIを活用して取り組むべきテーマを尋ねると、萩原准教授は日本の文化的な土壌を挙げました。日本では、AIやロボットと聞くと、人のパートナーのような存在を思い浮かべる人が多いように感じるといいます。一方、米国ではAIが「人類にとっての脅威」や「対峙すべき存在」として描かれることが多い印象があります。

「実用性という観点ももちろん重要ですが、「人のパートナーとしてのロボット」という分野では、日本は特に強みを発揮できるのではないかと感じています。」

――萩原准教授

萩原准教授が進める記号創発ロボティクスも、この考え方につながっています。知的な存在は、ロボットでもAIでも構いません。そうした存在が人と共存し、コミュニケーションを通じて言葉の仕組みそのものを変化・発展させていく。ロボットは人とは異なる身体で実世界を理解するため、人だけでは見えていなかった側面を明らかにし、人の知恵を拡張してくれる存在になるかもしれない――その未来に期待して、研究に取り組んでいます。

5年後、10年後――人とAIが役割を分かち合う社会へ

5年後、10年後の日本社会について、萩原准教授は、家庭や教育、医療といった身近な場面に知的なエージェントが自然に入り込み、人と協調しながら判断や行動を支える社会になると見ています。

AIやロボットを対峙する存在とするのか、それとも共存するパートナーとして取り込むのか。その選択は、これからの日本社会にとって非常に重要です。人がすべてをAIに任せるのではなく、人とAIが役割を分かち合い、互いの強みを生かして社会を支えていく――それが、日本らしいAIと共存する社会の姿だと萩原准教授は語ります。

よくある質問(FAQ)

Q. 生成AIに「使われる側」になるとはどういうことですか?

A. 生成AIが出した結果をそのまま受け取り、深く考えずに使ってしまう状態です。萩原准教授は、学生の中に知らず知らずのうちにその状態になっている人が少なくないと指摘しています。本来は「これはおかしい」と判断し、実世界の問題や条件に照らして調整・修正する、生成AIをコントロールする側に立つ必要があります。

Q. 生成AI時代に理論を学ぶ意味はありますか?

A. 萩原准教授は、実装のハードルが下がった今こそ理論が重要になると述べています。理論を理解していれば比較的容易に実装でき、実装の限界や内部で何が起きているかを見極められるからです。自分で一からコードを書けなくても、どこが足りず、どう直せば目的に近づくかを判断する力が求められます。

Q. 生成AIがあるのに、なぜ実体験が大切なのですか?

A. 大規模言語モデルはウェブ上の大量のデータから学習しているため、その人が置かれたローカルな環境での実体験を自ら得ることはできません。そうした経験は言葉にしにくいものでもあります。萩原准教授は、自分の実体験から「何が問題なのか」を考えることが、研究テーマや価値ある問いを見つけるうえで不可欠だとしています。

Q. 大学教育の役割は何ですか?

A. 萩原准教授は、調査を行い、仮説を立て、それを検証し、結果を他者にわかりやすく説明して共有するプロセスを通じて、論理的な思考力を育てることが大学教育の役割だと述べています。学部教育だけでは基礎知識の習得で終わりがちな点が課題です。

Q. 日本はAIやロボットの分野でどんな強みがありますか?

A. 萩原准教授は、日本ではAIやロボットと聞いて人のパートナーのような存在を思い浮かべる人が多い一方、米国では人類にとっての脅威として描かれることが多い印象があると述べています。AIやロボットを人のパートナーとして受け入れる文化的な土壌が、日本の強みになりうると考えています。

まとめ:AIを使いこなす鍵は、問いと理論

  • 生成AIの結果をそのまま受け取る「使われる側」ではなく、判断し調整する「使いこなす側」に立つ
  • 実装のハードルが下がった今こそ、理論で実装の限界や内部の仕組みを見極める力が重要
  • 生成AIが持たない、自分の実体験や言葉にしにくい経験から、価値ある問いが生まれる
  • 大学教育の役割は、調査・仮説・検証・説明を通じて論理的な思考力を育てること
  • 日本には、AIやロボットをパートナーとして受け入れ、共存する社会を築く素地がある

AIやロボットが人間のパートナーとして存在する社会は、もうすぐそこまで来ています。そのとき、AIを使いこなし、共に社会を支えていけるかどうかは、私たち一人ひとりの問いと理解の力にかかっています。

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